ホタル

暑くなってきましたなぁ。
週末に連続でホタルの話題を扱ったテレビを見ちゃいまして、あぁ夏なんだなぁと。

北東の外れとはいえ一応は東京の生まれですから、野生のホタルを生で見たことって無かったんですな。生物園で飼育されてるのを一度か二度見たくらい。なのでホタルというのはどこか憧れ的な存在だったんですよ。

26歳でしたか、関西の田舎の溜め池で釣りをしてたんですな。道路に車を駐めてから背丈ほどある葦を掻き分けて進むこと10数分。そんな人知れぬ場所にヒッソリと存在する溜め池でした。
釣りを始めてから暫くすると太陽が傾き始めまして、遠くの山をオレンジ色に染めていくんですよ。真っ青だった夏の空もだんだんと色が濃くなって紫色に変わっていくんですな。そりゃ美しい景色なんです。

すると小さなゴキブリみたいな虫が飛んできてTシャツに止まるんですよ。
オイラ虫系は得意じゃないので「気持ち悪っ!」と言いながらアタマに巻いていたタオルを手にとって叩き落とすわけです。
虫は叩き落としても次から次へと飛んできまして埒があかない。なのでもう身体を揺らすようにして虫が止まらないように抵抗するわけです。

「ツイスト踊りながら釣りしてるアホはどこのどいつだと思ったら・・・、ワシのツレだったんかい!」
と対岸で釣っていた友達がオイラの姿を指さして笑うわけですよ。
それくらい激しく身じろぎしながらタオルで次から次へと叩き落とすんですな。

はい、オチはお分かりですね?
暗くなってから愕然としましたよ、大量に殺してた虫の正体が憧れのホタルだったとはねぇ。

ホタルなんてピカピカーッと光るから貴重なんですよ。光らんかったらただの小さな虫でっせ。
暗闇で見るとお尻の光だけが強調されて見えるからキレイなのであって、飛び交う数百匹の身体全体ごとクッキリと見えてごらんなさい。大きな蚊柱の中に飛び込んだような感覚だと思いまっせ、きっと。
逆にゴキブリのお尻がピカピカッと光ろうものなら奥様方も「あら素敵」なんて仰って殺虫剤なんか売れないかもしれないわけですよ。
羽化したホタルの寿命が一週間で、そのほのかな光りと相まって儚げな印象を与えているわけですから、セミもお尻が光れば扱いが変わってたのかもしれませんなぁ。

そう考えるとなんだか不公平な気がして納得がいきませんなぁ。
まぁ、殺しても死なないゴキブリや暑苦しく騒々しいセミじゃお尻を光らせたくらいじゃどうにもならんのかもしれんけど。

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