サーキュレータの分解修理(首振り時の異音)

アイリスオーヤマ サーキュレーター 静音 8畳 マカロン マットデザイン 首振り固定 パワフル送風 コンパクト PCF-MKM15N-B ブラック
アイリスオーヤマ(IRIS OHYAMA)
¥2,980(2025/10/03 04:36時点)
商品サイズ(cm)(電源コード含まず):幅約25.2×奥行約18.4×高さ約25.6●製品質量:約1.1kg

左右首振り時に大きな異音がするサーキュレーターを預かったので備忘録として残しておきます。

修理概要

首振りと言っても扇風機のような首振りではなくて、本体自体が受け皿の上をスライドする仕組み。
と文字で書くと分かりにくいですが分解した画像をみるとよくわかります。

右画像のような受け皿の上に左画像の本体が乗っかって固定されます。

本体側にはこのような小さな球体がいくつか埋め込んであって

下部の受け皿にある樹脂のレールの上をスライドするわけです。

本体側の球体は固定されているので回転はしません、ベアリングのように回転させれば首振りもスムーズなのでしょうが、そうするとコストが嵩むのでしょうね。

その代わりグリスがたっぷりと塗られています。
本体側の他の部分にも大量のグリスが塗られているので分解するときは手袋をするなどの対策が必要です。

で、今回の異音の原因は本体側の赤丸で囲った部分の部品。
この部品に下部の受け皿に固定されるネジ穴が空いていて、全ての荷重を支えることになります。荷重を支えるだけでなく荷重を受け止めて回転もするんです。
なのでとても重要な部品。

そんな大事な部品を外して確認してみると、嵌合部のツメの入り方がおかしいことに気がつきます。画像の上側のツメと下側のツメを比べると下側のツメが途中までしか差し込まれていないですよね。

そのせいでこのように部品同士の結合が上手くいかず歪んでしまっています。
上記したようにこの部品が全ての荷重を支えて回転しているのです。なのにここが歪んでいるのですから異音がするのも当然の現象です。

というわけで、差込が足りなかったツメをシッカリと差し込んであげます。

キチンと差し込んだら歪みが無くなりました。

あとはモーターに金属用の潤滑剤を吹いて、摺動部にはグリスをたっぷり。
で元通りに組み上げて異音が消えていることを確認。で修理完了です。

今回は嵌まっているべき箇所が嵌まっていないというのが原因でしたが、では「なぜ嵌まっていないのか?」と考えてみます。

この部分は荷重がかかる場所であることを考えると、使用していく過程で徐々に外れたとは考えにくいです。この部分が徐々に外れるには荷重がかかる方向とは反対向きのチカラがかかる必要があるからです。

そう考えるとこの部分が嵌まっていない理由は「最初から外れていたから」という結論に達します。

この商品の本体価格は約7~8千円くらいでしょうか。1万円弱の商品がこんな造りだと考えると「勘弁してよ」と言いたくなります。

昨今のサーキュレーターにもの申す

家電製品アドバイザー視点

家電アドバイザーの資格を持っていますのでその観点から考えてみます。

最近のサーキュレーターは当たり前のように首を振ります。上下左右に首を振る360度首振りなんて商品も人気です。
ですが、サーキュレーターの本来の用途を考えると首振りなんて必要ないんですよ。手動で上下の角度が変えられればいいんです。

そもそものサーキュレーターの役割は「空気の循環を作り出すこと」です。
暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜ります。この溜った空気を室内に循環させて冷暖房の効率を上げるのがサーキュレーターの役割です。

空気を効率よく循環させるには気流を一方向に流し続ける必要があります。気流の向きが頻繁に変わってしまうとせっかくできた空気の循環が打ち消されてしまうからです。

ですので、サーキュレータの本来の役割である、「室内空気の循環で冷暖房効率を上げる」という用途においては首振り機能なんて必要ないんです。むしろ邪魔です。

ではなぜメーカーは首振り機能を付けるのか?
360度などという首振り機能を目玉にするのか?

考えられるのは。サーキュレーターを空気の循環以外で使うことを考えているからでしょうか。例えば室内干しの洗濯物を乾かす用途でサーキュレーターを使うのであれば首振り機能はとても有効です。

ですので洗濯物を乾かすのなら首振りはあっても良いのでしょう。ですがサーキュレーター本来の使い方をするのであれば首振りは無くても全く困りません。

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また、サーキュレーターを扇風機として兼用するといった用途も考えられます。
状況に応じてサーキュレーターを扇風機としても使いたいという要望は一定数あるように見受けられます。扇風機として使うのであれば首振り機能は必須となりますよね。

ですが、扇風機とサーキュレーターではそもそもの用途が違います。扇風機の元々の用途は「直接風を浴びて涼む」のが目的です。
サーキュレーターの用途は前述したように「室内の空気を循環させる」のが目的です。

用途が違うので羽根の大きさや枚数も異なります。羽のサイズや枚数が違うので生み出される風の質も違います。扇風機が生み出す風は「近い範囲に広く届く優しい風」なのに対して、サーキュレーターが生み出す風は「直線的に遠くまで届く強い風」です。

なので扇風機とサーキュレーターは使い分けるべきです。サーキュレーターの風を直接浴び続けるなんて使い方はするべきではありません。

もう一つ、メーカーが首振り機能を付ける理由を考えてみると、

「機能を増やせば本体価格を上げられるから」

これに尽きるのではないでしょうか。
首振りという機能を付けるとそのぶん単価が上げられるんですよ。

某メーカーのサーキュレーターの中から、余計な機能の無いベーシックなモデルと首振り機能付きモデルの価格差を比べてみます。

  • ベーシックモデル→約3000円前後
  • 首振り機能付き→約5000円前後

このメーカーは比較的良心的な価格とラインナップで揃えていますが、それでも首振りが付くだけで2000円UPです。

これにフルリモコンやDCモーターという機能が追加されると1万円弱くらいの値段で売られるようになります。
販売するお店側も同じ売れるなら値段が高い商品を売りたいので高機能な商品を優先して仕入れ・展示します。

本来の用途的には必要の無い機能を付けて値段を上げればメーカーもお店も消費者にそっぽを向かれそうですが、残念ながら消費者はそれほど賢くありません。

値段が高い物=良いもの、と考えますから機能が少ない低価格な商品よりも高機能で値段が高い商品を選んでしまうんです。

家電製品エンジニア視点

家電エンジニアの資格も持っていますので、その観点からも考えてみます。

どんな機械も同じですが、

機能が増える=可動箇所が増える=部品が増える=故障する可能性が増える

という図式が成り立ちます。
どんな家電製品でも機能が増えるということは壊れる可能性のある箇所が増えることになるんです。

扇風機の首振りはモーターによって羽根が回転する力を、組み合わせたギアに伝えることにより首を振るチカラに変換しています。シンプルですがとても理にかなった方法で、この仕組みは扇風機の長い歴史の中で洗練されてきました。

そこへいくと文頭にも書きましたがサーキュレーターの首振りは扇風機の首振りとは異なる仕組みで動いています。今回修理したメーカーだけでなく、ほとんどのサーキュレーターの首振りは今回の修理品と同じような仕組みで実装されています。

歴史も浅くまだまだ改良の余地がある仕組みだと思いますし、今後もっと効率の良い異なる仕組みが実装されるのかもしれませんが、前述したようにそもそもサーキュレーターに首振りは必要ないというのが個人的な意見です。

サーキュレーターは2千円台の商品もあれば1万円を超える商品も存在します。
必要の無い機能が搭載されている製品に最安製品の倍以上の金額を払うのが妥当か否か。冷静に判断したいところです。

サーキュレーターの修理料金

ちなみに、今回のような修理をメーカーに依頼すると修理費用はいくらくらいかかるのでしょうか?

国内メーカーの製品の多くは購入後1年間のメーカー保証が付いています。
保証の内容は「通常の使用において生じた不具合は無料で修理・交換します」というもの。

「通常の使用において」ということなので通常では無い使用方法で生じた不具合や不慮の事故による不具合は保証されません。
例えば「誤って水没させた」とか「サウナのような高温多湿の場所で使った」とか。

サーキュレーターを販売するメーカーの多くは通常の使用で生じた不具合は新品交換という対応になります。
修理ではありません、新品交換なんです。

修理をするには修理センターを設けて修理をする人員も雇わなければいけません。サーキュレーターのようなお手頃な価格の製品のために設備投資をするくらいなら新品交換する方が安上がりなんでしょうね。
これはサーキュレーターに限った話ではなくて、いわゆるジェネリック家電メーカーの製品はこういった修理対応になることが多いらしいです。

ジェネリック家電 - Wikipedia

さて、無料で新品交換してくれるのはあくまで保証期間内のお話です。
では保証期間が切れた場合はどうなるのか?

保証期間が切れても新品交換です。ただし無料ではなく有料です。

では有料とはおいくらか?

多くの場合で実費と同じくらいの値段になります。新品を普通に購入するのと同じくらいのお値段です。

要するにメーカーの言い分としては「保証期間が終了した以降に壊れたら買い換えてね」ということなのでしょう。

参考までにアイリスオーヤマの修理に関すページにリンクを張っておきます。

「サーキュレーター / 季節家電」の製品・故障状況のご確認| 家電製品修理料金診断|お客様サポート|アイリスオーヤマ
「サーキュレーター / 季節家電」の修理・概算お見積り・お申し込みはこちらから。保証状況や症状を入力いただくことで概算お見積りをご確認いただけます。

保証期間が過ぎたら壊れても新品交換。そう考えるとますます必要ない機能は最初から付いていない方がいいと思えてきませんか?

余計な機能は要らない

1, メーカーが機能豊富な製品を作る
2, お店がそれをお薦めする
3, よく考えもせずに消費者が買う
4, 機能豊富なぶん壊れやすい
5, 壊れたから買い換える
6, 1に戻る

こういうサイクルができあがっているので毎年毎年たくさんのサーキュレーターが販売され続けるという仕組みです。

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