そもそも「エアコンの2027年問題」ってなに?
皆さんはスマートフォンやタブレット、パソコンを使いますよね。ここ10年で私たちの生活に広く普及しました。これらはもちろん、電気で動きます。
さらに、ネットショッピングや、最近爆発的な普及を見せている「AI」。私たちがスマホからこうした便利なサービスを利用する裏側(巨大なデータセンターなど)でも、実は膨大な電気が使われています。
つまり、私たちが意識していないところで、世の中の「電気の需要」が爆発的に高まっているのです。
このままでは近い将来、電気の供給が追いつかなくなってしまいます。
かといって、国が「国民一人一人のスマホ使用時間を制限します!」なんて決めるわけにはいきません。そんなことをしたら暴動が起きかねませんね。
そこで国は、家電製品の電力使用を抑えるための新しい決まり事を考えました。
そのターゲットの筆頭として選ばれたのが、家庭の中で最も電力を消費する家電である「エアコン」の省エネ化です。
国はエアコンの省エネ化を強制的に進めるため、現在売られている「電力消費が大きいモデル」を市場から淘汰(とうた)する厳しい基準を打ち出しました。
「電力消費が大きいモデルを排除し、省エネ性能に優れたモデルだけを販売する」
これだけ見ると、地球にも優しくとても素晴らしいことのように思えますが、消費者である私たちは一つ考えなければいけないことがあります。
現状のエアコン市場は、以下のような図式が成り立っています。
- 電気をたくさん使うモデル = 低価格(安い)
- 省エネのモデル = 高価格(高い)
国の方針によって「電気をたくさん使うモデル」は販売できなくなりますから、結果として売り場に残るのは、
- 省エネのモデル = 高価格(高い)
という図式だけになります。
要するに、「省エネではないけれど、機能がシンプルで価格が安く、買いやすかったエアコン」が買えなくなる。
これが、いま世間を騒がせている「エアコンの2027年問題」の正体です。
「省エネ性能が上がるなら、電気代が安くなって結果的に得をするのでは?」と考える方も多いでしょう。本記事では、実際の製品スペックをもとに「値上げ分を電気代の差額で回収できるのか」という損得分岐点を論理的に検証します。
省エネ性能の高いモデルに関する記事は別に公開しています。併せてご覧下さい

なぜ「格安モデル」が作れなくなるのか?
これまで、各メーカーは機能を絞った低価格なボトムモデル(例:三菱電機 霧ヶ峰 GEシリーズなど)を販売してきました。しかし、2027年の新基準ではこの価格帯の維持が物理的に困難になります。
前述したように機能を維持した低価格なモデルは省エネ性能が低いからです。
省エネ性能が低いモデルを2027年以降の新たな省エネ基準に適合させるにはいくつかの改良が必要となります。
- 熱交換器の大型化が必須になる
省エネ基準(APF:通年エネルギー消費効率)をクリアするためには、熱を効率よく運ぶための銅管やアルミフィンを増やす(=室内機や室外機を大きくする)必要があります。材料費の増加が価格に直結します。 - 「寸法区分」の廃止
これまで「コンパクトな室内機」は省エネ基準が緩く設定されていましたが、この優遇措置が撤廃されます。安価で小型なモデルほど、目標達成のハードルが跳ね上がります。このハードルを越えるためには室外機の大型化や内部部品の高性能化が不可欠です。 - 加重平均方式(CAFE方式)の採用
メーカーは「自社が出荷するエアコン全体の平均値」で省エネ基準をクリアする義務があります。目標に届かない「安くて効率の悪いモデル」を売り続けることは、メーカーにとってリスクとなるため、ラインナップから削ぎ落とされます。
結果として、2026年までの「省エネ性能は低いけど機能を絞った低価格なモデル」を2027年以降の省エネ性能に適合させることにより現在よりも3〜5万円程度の価格上昇が見込まれます。
シミュレーション:値上がり分を「電気代」で取り戻せるか?
電気代が安くなるのですから、省エネ性能が上がることは悪いことではありません。問題は省エネ性能が上がるにつれて商品の価格も上がってしまうことです。
では、仮に本体価格が4万円上がったとして、その分を向上した省エネ性能(電気代の節約)で回収できるのでしょうか。
三菱電機「霧ヶ峰」の現行モデル(ボトムのGEシリーズと、省エネ上位のZシリーズ)の消費電力を参考に、1日の使用時間を16時間、電気代を31円/kWhとして計算します。
14畳用(リビング等)の場合
比較的広い空間で、木造戸建てのように冷暖房の負荷がかかりやすい環境を想定します。
- 期間消費電力量の差: 約398kWh(上位モデルの方が省エネ)
- 年間の電気代差額: 約12,338円
もし次世代ボトムモデルが4万円値上がりした場合、約3.2年〜4年で差額を回収できる計算になります。14畳以上の大容量モデルにおいては、本体価格が上がっても、長期的なトータルコスト(生涯費用)では得をする可能性が高いと言えます。
6畳用(寝室・子供部屋等)の場合
絶対的な消費電力量が少ない小部屋の場合はどうでしょうか。
- 期間消費電力量の差: 約114kWh
- 年間の電気代差額: 約3,534円
同じく4万円値上がりしたと仮定すると、差額の回収に約11年以上かかります。一般的なエアコンの耐用年数(約10年)を超えてしまうため、「壊れるまでに投資を回収できない(=損をする)」という計算になります。
お得に買えるか?:「自治体の補助金」という裏技
ここで、コストパフォーマンスを劇的に改善させる重要な要素があります。それが「省エネ家電に対する補助金(ポイント還元)」の活用です。
例えば「東京ゼロエミポイント」や、埼玉県の「八潮市」「越谷市」などで実施されている省エネ家電補助金制度です。これらの施策は、一定の省エネ基準(統一省エネラベル等)をクリアした上位機種のみが対象となります。GEシリーズのようなボトムモデルは対象外になることがほとんどです。
もし、上位モデルの購入で数万円の補助金やポイント還元が受けられる場合、「ボトムモデルとの初期投資の差額」が一気に縮まります。
これにより、前述の「投資回収期間」が数年単位で短縮され、14畳用はもちろん、場合によっては6畳用でも上位の省エネモデルを買った方がトータルで安上がりになる逆転現象が起きます。
家電量販店での「賢い立ち回り方」
この補助金制度を活用するにあたり、1つ注意点があります。
補助金はあくまで「各自治体の施策」であり、家電量販店が独自に行っているキャンペーンではありません。そのため、店舗のスタッフ全員が各市町村の複雑な補助金制度を完全に把握しているわけではありません。
店頭でエアコン選びの相談をする際は、以下のポイントを意識してください。
- スタッフを見極める: 補助金の話を振った際、説明が曖昧だったり、対象機種を即答できない場合は、そのスタッフから買うのはリスクです。
- 遠慮なくチェンジする: 説明に納得がいかなければ、別のスタッフに代わってもらうか、いっそ別の店舗(またはお住まいの地域密着の店舗)に行きましょう。
- 魔法の言葉を使う: 最初から「〇〇市の補助金を使って省エネモデルを買いたいので、補助金制度に一番詳しいスタッフさんを呼んでください」と指名してしまうのが、最も無駄のない確実な方法です。
結論:私たちが今とるべき「正解」の行動
2027年に向けて最下位モデルの性能が底上げされれば、メーカーはラインナップの価格差を維持するため、既存の上位モデルも便乗値上げを行う可能性が高いです。
エアコンという商品全体の価格が底上げされてしまうんですね。
純粋な「コストパフォーマンス(支払総額の最小化)」を重視する場合の最適解は以下の通りです。
- 6畳〜8畳用のエアコンが必要な場合:
補助金が使えない環境であれば、電気代の差で価格差を埋めるのは不可能です。現在の安いボトムモデル(型落ち含む)を在庫があるうちに確保しておくのが、最も財布に優しい選択です。 - 14畳以上のエアコンが必要な場合(または補助金が使える場合):
電気代の差額が大きく、補助金による初期費用の圧縮も期待できます。来年以降の全体的な値上げリスクを考慮すると、「現在の省エネ上位モデル」を自治体の補助金と型落ちセールの合わせ技で狙うのが、トータルコストを最も抑えられる「最強の戦略」です。
2027年問題による省エネ化は、環境には優しいかもしれませんが、何の対策も打たなければ家計には厳しくなります。自身の使用環境と自治体の制度をフル活用し、早めの判断で賢く乗り切りましょう。
極めて私的な結論
最後に八潮市在住の家電アドバイザーとして、ケースごとのオススメを書いておきます。八潮市なので補助金も考慮しています。
あくまで「極めて私的な結論」なので全ての人に当てはまるわけではありませんが、多少でも参考になれば嬉しいです。
リビングルームのエアコンを買い換えたい場合
滞在時間が長く比較的畳数があるLDKやDKの場合は省エネモデルを購入するといいです。大きなサイズの省エネモデルはスペックも高くなるのでお値段もなかなか高額ですが、ハイスペック省エネモデルは長持ちしますので、差額は長く使うにつれて電気代で埋めていけます。補助金も上手に活用しましょう。
とはいえ、18畳用になると選択肢は狭まり、20畳用以上では補助金対象となるモデルがほぼ存在しなくなりますので、とんでもなく広いLDKの場合はエントリーモデルを定期的に買い換える方がいいのかもしれません。
集合住宅でエアコンが1台しかつけられない場合
間取りは2Kとか3Kあるんだけどエアコンが付けられるのは一箇所だけ!
築年数が古い公営住宅に多いのかな?私もそういう部屋に住んでいたことがあります。夏の暑さを除けば住み心地が良いんですよねぇ、立地も良いところに立ってることが多いし家賃もお手頃だし。
とはいえ、近年の夏の殺人的な暑さを経験してしまったら、エアコン1台で少しでも快適さを求めたいところです。
エアコンは6畳の部屋には6畳用、12畳の部屋には12畳用というのが基本ですが、キッチンスペースを含めて3~4部屋を1台のエアコンで賄うなら可能な限り大きなサイズのエアコンを付けたいところ。
省エネモデルを選ぶかどうかはライフスタイルによって変わります。お仕事や学校で日中は部屋を空けるのであれば省エネモデルは不要でしょう。
高齢者の方や自営業者など、一年を通してお部屋で過ごすことが多いのであれば省エネモデルが魅力的です。補助金を上手く活用して下さい。
ただし、大きいサイズになると200ボルトの電圧が必要になってきます。お住まいのブレーカーを見て200ボルト機種が使えるかどうかの確認をしてください。分からなければブレーカー(分電盤)の写真を撮って電気屋さんや家電量販店で聞いてみるといいです。
寝室・客間
滞在時間が短い部屋に省エネモデルを設置してもあまりコスパが良くありません。
お安いモデルを購入できるのは残り僅かな期間です。購入・買い換えを検討しているのであれば早めが良いです。

