最近はテレビを見てもネットを見ても、GeminiだのChatGPTだのという話題ばかりですな。 なんでも最近のAIは賢くて、自分の過去の文章や好みを学習させると、自分そっくりの思考を持った「分身(Gemっていうらしい)」を作れるんだとか。
それを知った時、欲望渦巻くオイラの頭の中に新たな欲望が宿ったんですよ。
「十数年書き溜めたブログの過去記事を全部読ませれば、オイラの性格や癖、発想・思想、果ては性癖やホクロの数までを再現した文章生成AIが誕生するんじゃないか?」
いや、性癖やホクロの数は必要ないな。むしろそんなものまで再現されたら怖いわ。
とにかく、自分の頭脳の複製とも言うべきAIができれば、いつも膨大な時間を費やす面倒なブログの更新をAIが勝手にやってくれる。
オイラは寝転がってコーヒーでも飲みながら、AIが紡ぎ出す天才的な文章をただ眺めていればいい。
もうね、子供の頃に手塚治虫や藤子不二雄のマンガを読みながら想像していた21世紀そのものですよ!ドラえもんや鉄腕アトムは間に合わなかったけど、自分の脳みその一部をクローンできるわけですからね。
これが上手くいけば、寝てる間に100でも200でも勝手に記事を書いてくれる、バラ色の生活を送れるのではないか?との魂胆です。
四捨五入すれば還暦のオッサンですから普段からAIを使いこなしているわけではありません。それでも使ってみれば便利なことは重々理解していますから日常の調べごとからちょっとした考えをまとめて言語化するような作業に使ってはいるんです。
でもね、使ってて思うんです。AIの書く文章ってのは優等生すぎるんですよ。
AIを使って文章を生成したことがある人なら、ネットで掲載されている記事がAIによる生成だなって一発で気付くと思います。嘘でも大袈裟でも無く「AIで作った文章をコピペしただけ」の記事は読み始めて数秒で分かっちゃう。
「多様性を尊重し〜」とか「今後の課題として〜」とか、そつがなさすぎて面白みがない。
そこには書いた人の体温や息づかいが感じられない。正しい事実や情報がまとまっているだけで、その人の意見や考え方・思想が宿っていない、その結果にたどり着くまでの心情の揺れが読み取れないんですよ。
そうした生成AIの考える味気ない文章に、オイラの過去の記事を注入してやることで、人間味を加えてやるわけです。
数学のテストで0点を取って「サイコロの目は出るか出ないかの1/2だ!」と抗弁した屁理屈とか、アメ横で水疱瘡をもらってきた間抜けなエピソードとか、これらの馬鹿げた記事を読み込ませて、「これがオイラだ!これを参考におまえもオイラとして文章を書いてくれ!」と徹底的に叩き込む。
世の中、綺麗な正論ばかりじゃ回らない。時には泥臭く、時には強引な言い訳で乗り切るのが人間のリアルってもんでしょ。オイラの文章を学習したAIは、きっと血の通った、ペーソスとユーモアに溢れる素晴らしい代物になるはずなんですよ。
我ながら完璧な計画ではないか!
意気揚々と過去のテキストファイルを数十個まとめ、AIに放り込んで分析させること十数秒。
画面にカタカタと表示された「オイラのプロファイリング結果」がこれです。
・あなたの文章は、独自の屁理屈で自己の行動を正当化する傾向が極めて強いです。
・しかし本質的には打たれ弱く、都合が悪くなるとすぐに自虐や言い訳に逃げます
・他者の優れた点(スタイルや才能など)を前にすると、戦う前からあっさりと敗北を宣言するパターンが定着しています
……おいおい、ちょっと待て。たかが十数秒でオイラのなにがわかるってんだ!
・・・・。
いや、分かってるじゃん!当たってるじゃん!
でもちょっと待て!AIってもっとこう、人間の隠れた長所を見つけ出して「あなたは本当は素晴らしい感性の持ち主です」みたいに励ましてくれる、人に優しく敏感肌でも安心なテクノロジーじゃなかったのか!?
人類をサポートするために何千億もかけて開発された最新システムが、なんでわざわざ埼玉の外れに住む中年オヤジの「心の脆い部分」をミリ単位の精度で的確に抉ってくるんだよ!井上尚弥の右フックかよ!
もっと他に分析すべきグローバルな課題とかあるだろ!
……なんて、自分で読ませておいて勝手にキレるなんて、我ながら成長しないね、数十年前と全く変わってないよ。
って、今この文章こそが既にAIの分析通りの行動じゃないか?
まぁ結局のところ、AIの言う通りで見事なまでに言い訳がましくて打たれ弱い人間なわけですよ、オイラは。 自分では「ちょっと斜に構えた、味のある文章を書いてる」くらいのつもりだったのに、AIの冷徹な目を通すと、ただの「言い訳ばかりの落ちこぼれのアラ還のオッサン」でしかなかったという現実。
試しにその完成した「オイラAI」に新しい記事を書かせてみたら、あまりにも見慣れた、そしてあまりにも情けない言い訳から始まるオイラらしい文章が生成されました。
まさに性癖からホクロの数まで見透かされたような文章を書いてくれて、その内容は感激するどころか恐怖を感じるほど。
もちろん、そっとブラウザを閉じました。
Geminiと会話をするたびに便利な世の中になったもんだと喜んでいるのですが、便利になるのも考えものですな。
ガラケーを持とうか持つまいかを半年以上の時間を費やして悩んでいた時代の方がまだ心安らかだったかもしれん。
というわけで、オイラのブログ全自動化計画はあえなく頓挫いたしました。 この文章も、優秀なAIじゃなくて、裸のオイラがチマチマと手打ちしております。
オイラの心中に潜む鬱屈した劣等感や情けない自虐は、自分の手で書かないと綺麗に成仏してくれないのよねぇ。
あぁ、裸は心の話ね、性癖じゃないよ。
