いきなり結論
我が家では2台の加湿機能付きエアコンを10年以上使っています。使ったことも無い人間がとやかく言っても説得力がありませんが、実際に使っているワタシが言うのですから多少は説得力があると思います。
といった前置きを踏まえて、いきなりですが結論から始めます。
エアコンの加湿機能はほとんど役に立たん。加湿機能目当てでエアコンを選ぶのはやめましょう。
加湿とは
空気中の水分量を増やす、それが加湿。
加湿の目的や湿度とは?といった内容は別記事にまとめていますのでそちらをお読みいただけると幸いです。
加湿器の加湿方法
ほとんど全ての加湿器では、給水タンクに貯めた水を空気中に放出することで加湿します。
気化式やスチーム式・超音波式といった方式はいくつかありますが、どの方式でも共通しているのは水を使うということです。
タンクに水を貯めて電源オン!
しばらくすると室内の湿度が上がる始め、時間経過と共にタンク内の水が減っていきます。
はじめて加湿器を使ったときは、「こんなに水を使うほど空気が乾燥していたのか!」と驚いたものです。
加湿機能付きエアコンの加湿方法
加湿器が水を使って加湿するのに対して、エアコンの加湿機能はどのように加湿するのでしょう?
普通に考えればエアコンも水使っていると思いますよね?
従来の加湿器があれだけ大量の水使って加湿しているのですから、水を使わないで加湿できる方法があるのであれば、加湿器も水を使わない方式の画期的な製品が販売されていてもおかしくないはずです。
ところがですよ、エアコンの加湿には水を使わないんです。
加湿器の面倒くさいところは給水の手間ですから、エアコンが一切の給水をしないで加湿が出来るのはすごく便利じゃないですか?
では、水を使わずにどうやって加湿しているのか?
加湿機能付きエアコンを販売しているダイキンとパナソニックの動画を見てみます。
どちらのメーカーも
「室外機に搭載された加湿ユニットで大気中の水分を集めて室内に送る」
という仕組みで加湿をしているようです。
加湿ユニットの中には水分を吸着する素材が入っていて。
水分が付着した吸着素材を温めてることで水分が蒸発。
蒸発した水滴を集めて室内機に送る。
という流れのようです。
この仕組み、どこかで見たことありません?家電製品に詳しい人ならピンとくるはず。
デシカント式の除湿機と同じ仕組みです。
要するに、室外機に内蔵したデシカント式の除湿機能によって大気中の水分を集め、集まった水分を室内に送って加湿する、というわけです。
加湿機能付きエアコンの加湿能力
加湿力と消費電力の比較
エアコンの加湿機能が室外機に内蔵された除湿機能を用いて実現されているということが分かりました。
では、加湿機能付きエアコンの加湿能力はどれくらいの性能なのでしょうか?
以下の文章・画像はメーカーサイトからの引用です。
各クラスの加湿量(加湿運転:設定しつど「連続」、風量「5」時)
| 電源 | 加湿量 | 加湿単独運転時の最大消費電力 |
|---|---|---|
| 9.0kW | 1,030ml/h | 1.70kWh |
| 8.0kW~4.0kW(200V) | 950ml/h | 1.58kWh |
| 4.0kW(100V)~3.6kw | 630ml/h | 0.92kWh |
| 2.8kW | 620ml/h | 0.91kWh |
| 2.5kW | 620ml/h | 0.91kWh |
| 2.2kW | 600ml/h | 0.90kWh |
- 加湿量は外気条件やリモコンの設定内容により変化します。
- ( )内は、加湿単独運転時の最大消費電力量です。
https://www.ac.daikin.co.jp/roomaircon/products/r_series/kinou/kasitsu
この表に記載されている加湿能力を一般的な加湿器と同条件で比較してみます。
加湿エアコン、木造8畳用の場合の加湿能力は 620ml/h
加湿機、木造8畳用の場合の加湿能力はおおよそ480ml/h
となるので、加湿力は加湿機能付きエアコンの方が上になります
では、消費電力はどうでしょうか?
加湿エアコン、木造8畳用の場合の消費電力は 0.91kW/h
スチーム式加湿機、木造8畳用の場合の消費電力は410W/h
気化式加湿機、木造8畳用の場合の消費電力は8W/h(強運転時)
温風気化式加湿機、木造8畳用の場合の消費電力は163W/h(強運転時)
エアコンだけ単位がkWなので単位を揃えてみます
加湿エアコン、910W/h
スチーム式、410W/h
気化式、8W/h
温風気化式、163W/h
となります。
加湿器の中では最も電気を喰うスチーム式の倍以上の消費電力を要することがわかります。
加湿エアコンの加湿量の測定条件
電気代がかかるといっても暖房としても使えてるんでしょう?
暖房しながら加湿して、さらに加湿力が加湿器よりも高いんだから電気喰うのも仕方がないじゃないの?
はい、ワタシもそう思ってました。だからこそ自宅に加湿機能付きのエアコンを2台も導入しているんです。
ところがですよ、メーカーが小さな文字で表示している加湿機能の測定条件を読んでみると「???」となるはずです。
加湿能力測定条件
外気温度7℃、湿度87%(JIS定格暖房能力測定条件)、室内温度20℃、ホース長4m、Rシリーズにおいて
- 外気温度-10℃未満、外気相対湿度が20%以下の場合は加湿運転できません。外気相対湿度が20%低下すると加湿量は20%低下します。
- 加湿ホースの長さ(配管長)は4mを基準にしています。長さが2m増えるごとに加湿量は約12%低下します。
Rシリーズ 「うるさらX」 加湿 | ルームエアコン | ダイキン工業株式会社ルームエアコンRシリーズ 「うるさらX」の加湿ページです。冬の加湿に、給水いらずのうるおい加湿。かしこく制御。空調専門メーカーのダイキンなら、お客様のご要望に合わせたルームエアコンが見つかります。
メーカーが表示する加湿量の測定条件は
- 外気温度7度
- 相対湿度87%
です。
気温7度で湿度が87%の環境って、具体的にどんな環境なのでしょうか?
Google先生と相談して探してみます。
| 都市名 | 計測年月 | 平均気温 | 平均湿度 |
| 東京(参考値) | 2020/01 | 7.1 | 65 |
| 会津若松市 | 2014/11 | 7.5 | 86 |
| 舞鶴市 | 2019/12 | 7.3 | 85 |
| 富山市 | 2010/12 | 6.4 | 84 |
時間をかけて探してみましたが、気温7度・湿度87%に近い値はこんな感じです。計測条件に近い数字を記録した都市は海沿いで湿った風が当たる都市や降雪・積雪の多い都市であることが分かります。
探してみて実感しましたが、常に雪が積もっていて湿度が高そうな都市でも、真冬に平均湿度が87パーセントに達するような都市はほとんど無いんですよ。
なにが言いたいかというと、メーカーが計測しているような気候条件に当てはまる場所は、日本中を探してもそう多くないということです。
言い方を変えるなら、メーカーは自社に都合の良い条件で計測しているんですよ。
少なくとも、関東や関西圏・中京圏など、冬場の空気がカラッカラに乾いている太平洋側の地域ではメーカーが表示しているような加湿能力は望めません。
何度も書いていますが、空気中に含むことが出来る水分の量は気温が下がると共に減っていきます。
気温7度で含むことが出来る水分量は最大で7.76グラムです。この7.76グラムは相対湿度が100%と仮定した場合の数字です。
気温7度で湿度が60%なら、7.76×0.6=4.7グラム(四捨五入)
気温7度で湿度60%ではわずか4.7グラムの水分しか含んでいないんです。このカラッカラの空気から水分を集めて室内に放出したところで大した役には立たないような気がしませんか?
加湿機能エアコンをコスパの面から考えてみる
気温7度の場合で4.7グラムだとしても、加湿してくれるならいいじゃないか。
という意見もあると思いますので、加湿能力は考えずにコスパの面で考えてみます。
まずはメーカーの参考書きを読んでください。
電気代は?
加湿ヒーターの消費電力は、100V機は最大で約760W、200V機は最大で約1,410Wです。0Wから最大消費電力の間でコントロールします。なお、加湿時の運転パターンはお客様の設定や部屋の広さ、換気回数、温湿度条件によって異なります。
加湿に要する最大消費電力は約760Wですって(6畳用の場合)
760Wはあくまでも最大で、0~760Wの範囲でコントロールするような書き方ですが、そもそも我が家のような南関東の場合だとエアコンの加湿では目標値まで加湿できないんですよ。
前述したようにエアコンだけで十分な加湿が出来るほど外の空気は湿っていませんから。
エアコンを回し続けても目標値まで加湿できないからエアコンは止まること無く常に加湿を続けます。
常に加湿を続けるというとことは最大消費電力で回りっぱなしということです。
電気は喰うけど設定湿度には達しない。これをコスパが悪いと言わずして何というのでしょう?
本体価格は?
世の中にはたくさんのエアコンが販売されていますが、加湿機能が付いたエアコンというのはそう多くはありません。むしろ数えるほどしかないんです。
メーカーではダイキンとパナソニックですが、この記事を執筆している2025年1月14日時点でパナソニックの最新エアコンラインナップの中に加湿機能モデルが見当たりません。
例年通りであればもう発表されてておかしくない時期なので、もしかしたらパナソニックは加湿機能から足を洗ったのかもしれません。
なので今回はダイキンの機種のみで比較していきます。
ダイキンのラインナップで加湿機能が付いているのはRシリーズとRXシリーズ、MXシリーズです。
RとRXは販路が違うくらいでほぼ同じモデル(だと思いますが違ったスイマセン)
ここでは価格比較がしやすいRシリーズと、加湿機能が付いていない他のモデルで比較してみます。
条件は6畳用の2024年モデルで価格.COMで調べています。
うるさらX AN224ARS-W(加湿機能付き)
初期価格、290,950円(2024/1-3)
最安時の価格、205,937円(2024/11/5-14)
AN224AFS-W (Fシリーズ)
初期価格、173,800円(2024/7/14-16)
最安時の価格、108,000円(2024/12/14-16)
AN224ACS-W (Cシリーズ)
初期価格、151,800円(2024/7/14-16)
最安時の価格、108,000円(2024/12/29-30)
AN224AES-W (Eシリーズ)
初期価格、113,080円(2024/7/14-16)
最安時の価格、81,000円(2024/11/24-12/06)
最安時の価格は様々な条件が重なったときの価格なのであまり参考にはなりませんが、初期価格を見るだけでもだいぶお値段が違うことに気がつきます。
うるさらX(Rシリーズ)はダイキンエアコンの最高峰なのでお値段も6畳にもかかわらず30万近い価格です。
Fシリーズは上位モデルに搭載されているAIセンサーによる自動運転や複雑な気流制御を省いたモデル。CシリーズやEシリーズといった下位モデルとの違いは除湿機能に再熱除湿を搭載していることでしょうか。
Cシリーズはコンパクトな室内機で場所を選ばずに設置できるスタンダードタイプ。フィルター自動お掃除機能も付いています。
Eシリーズは余計な機能を一切省いたエントリーモデル。夏場に冷やす・冬場に温めるというエアコン本来の機能さえシッカリしてれば他は要らないじゃん!という層から支持されています。
2024モデルから室内機がコンパクトになり大きくモデルチェンジしたらしいです。
このように、機能が増えれば増えるほど本体価格は上がっていくのですが、加湿機能ありとなしで比較すると、
Rシリーズ最安時、205,937円
Fシリーズ最安時、108,000円
と、10万円近い価格差が生じます。
もちろん、RシリーズとFシリーズの違いは加湿機能だけではありませんが。
とはいえ、エアコン加湿機能の実態を知ってもなお、10万円の価格差を埋めるほどの優位性をRシリーズに見いだせる人はそう多くは無いのでしょうか?
10万円あれば、なかなかの性能の加湿器と除湿機と空気清浄機をまとめて買えちゃいますよ?
最後のまとめ
エアコンの加湿能力なんてたいしたことないのに、なぜ家電量販店の店員は積極的に勧めてくるのか?
なんてことも書こうと思ったのですが、ここまでが長文になってしまったので疲れ果てました。
ワタシの意見が絶対的ではありません。違った角度で見たら違った意見が出てくることでしょう。
参考として記憶に留めていただけたら幸いです。


